かちかが生きてる

日記を書くよ

2023.5.16 サボテンってトゲを飛ばさないんだ

 

題名通り。

サボテンってトゲ、飛ばさないんだね。

 

私はこれまでの20数年を、「サボテンには知能があり、気に食わないやつにはトゲを飛ばしてくる」と思い、それを常識として生きてきた。

私はサボテンのことが結構好きで、でも「トゲを飛ばしてくる可能性があって怖いから」飼わないでいた。飼う、という表現を使うことからもわかる通り、私はサボテンを"生物"として見ている。

 

自分の間違いに気付いた理由は、最近自分の機嫌を取る方法が「食」一辺倒だな、他に楽しみを設けよう、そうだ、サボテンを飼ってみようか、と思い至ったことが発端だ。

飼ってみたい、でもどうしよう、あいつらトゲ飛ばしてくるから怖いんだよな。

そう考えて、ピン、と頭の中に小さな音が鳴った。…本当に?サボテンって本当にトゲを飛ばすのかしら。思えば、母親以外に「サボテンがトゲを飛ばす」話をしている人間を見たことがない気がする(この話は後述)。あれっ、あれ、……と考えて、Googleで「サボテン 針を飛ばす」と入力する。

 

「一般的なサボテンはトゲを飛ばすことはないが、うっかり触ったりしないように注意が必要だ。」

 

えっ

 

そうなの!?

 

ちなみに会社での出来事だ。がっつり仕事中、定時の一時間前に衝撃の事実を知ってしまった。

その後一時間は全然身が入らなくて、お供のコーヒーの減る速度もいつもの半分以下。退社の時に一気に飲み干した。

そうして、決めた。今日はサボテンを買って帰ろうと。確かめてやろう。奴らはトゲを飛ばすのか、飛ばさないのか。

 

 

会社用の鞄と食料品が入ったエコバッグを提げたまま自宅の近くの園芸店へ歩いて、道中母親へ文句のLINEを送った。

というのも、私が「サボテンはトゲを飛ばすもの」という認識を持ったのは母のせいだった。

幼い頃母は、店頭でサボテンを見かける度に昔サボテンの針に刺された話をした。ずらりとサボテンが並ぶ中を歩いていたら、触れてもいないのに手が細く小さなトゲまみれになったというのだ。自分の手がサボテンのようだったと母は言っていた。私はそれを何となく覚えていた。

母親は幼い頃、弟(つまり、私の叔父にあたる)に「たまごボーロ」の名称を「マルコ・ポーロ」と教え込み学校で赤っ恥をかかせた前科のある人間である。やられた!と思った。20数年も騙された!この野郎。

そんな気分でおり、しかし母親の返信は予想外のもので。

 

「ねえ!!!ねえママ!!(私は未だに母親のことをママと呼んでいる)ママのせいで今の今までサボテンが自発的にトゲ飛ばしてくると思ってたんだけど!!!!」

「飛ばすよ  手がサボテンになったもん」

 

しらを切る気か、とは思わなかった。母はいつも、ジョークの引き際は弁えている。

 

いざ話を聞いてみれば、そのエピソードは実際虚言でも何でも無いらしい。ますますわからなくなってきた。

本当は私の認識が合っているのではないか?みんな、嘘をついていないか?そんな風に思うけれど、Twitterのフォロワーさんたちは真実を知った私を見てサンタさんの正体が両親だと知った子供を見るような目をしている。なんだ。何なんだ。恥ずかしくなってきた。

 

 

紆余曲折あって、現在私の家には一人(今、自分で無意識に"一人"と書いてしまい驚いた)のサボテンが居る。

こじんまりとして、まるっこい。小さな子分がくっついている。花が咲きそうな部分があるけれど、私は数時間前までサボテンがトゲを飛ばしてくると思っていたようなサボテン素人なので、今の状態からどれほどの期間で開花するのかてんでわからない。

まるまるとしたそれがかわいくて、何度も撫でそうになる。友人に全力で止められた。

 

突然だが、私には「やんわりゾーン」という精神状態がある。「ゾーンに入る」という言葉があるが、その中でもやさしくてまるまるとしていて、物事を余裕を持って見ることのできるゾーンのことだ。

サボテンのお陰か、今私はそのやんわりゾーンの中にいる。特段嬉しくも悲しくもないけど、心が良い意味で静かで、良いアイデアもいつもより浮かんでくる気がする。私が一番好きな精神状態。サウナで"整う"とはこんな感じだろうか。違う気がする。

何はともあれ、ありがとう、サボテン。やっぱり何かを愛でるのはいいことなのかもしれない。花が咲くのも楽しみだ。こうして私は当初の目的を忘れていく。

 

 

折角なので、サボテンに名前をつけることにした。ちいさいのにトゲが立派で凛々しいので、「とげ子」ちゃんにした。やんわりゾーン、別名お花畑モードに入ってしまった私にネーミングセンスは無かった。

 

その後偶然、フィンランド語の挨拶が「モイ」と言うのだと知り、そのかわいい響きは名前にぴったりだったな、と思った。

あとの祭りである。今度追加で多肉植物でも飼おうと思う。